異変が見つかったら引き返すこと

『8番出口』の作者のインタビュー記事を読んだ。

作者は日本の地下通路が好きだから、海外の風景素材は使わずに自力であの舞台を作り上げたらしい。それを読んで初めて、私はあのゲームで日本の地下通路を楽しんでいたのだと気づいた。てっきり自分はシンプルかつ斬新なシステムに惹かれたのだと思い込んでいたけど、同じシステムでも舞台が海外の地下通路ならあまり魅力がない。ゲームルールは日本の地下通路の魅力を引き出すための道具として機能しているに過ぎない。

そのこだわりを守れたことが凄い。創作者のこだわりなんて大半は受け手に伝わらない。言ってしまえば無駄なもの。そんなものは切り捨ててさっさと次のアウトプットに進むのが最近のブームだ。地下通路を日本のものにするか?海外のものにするか?そんなこと誰が気にするの?手っ取り早く用意できる方で作ってしまえ。そう判断してしまいそうなところを、作者は踏みとどまった。必要なこだわりと不要なこだわりを見分けるには、どうすればいいのか。きっとそんなことは考えなくていい。そもそも日本の地下通路でなければ作るモチベーションが出なかったのだろう。異変が見つからなかったら、引き返さなければいい。