失敗したときの思考回路

ミスをしたときに一番考えてはいけないのは、ヘマをした自分の姿が他人の目にどう映っているか。「もし同じミスを他の人がしていたら私はその人をどう見るだろう」と反射的に考えてしまう、あれ。自分を客観的に眺めるのは悪くないようにも思えるけれど、大抵はそんな場合ではない。客観的にもなれていない。こういった想像をぐるぐる巡らせていると、言い訳をしたくなったり、注意力不足で次の失敗を引き起こしたりする。経験的には一番マシなのは、次に何をすべきかに意識を集中して、とにかくミスの連鎖を防ぐこと。挽回しようと張り切るのも良くない。挽回しようと思っているうちは、まだ失敗した事実を受け入れきれていない。

「ミスの連鎖を防ぐのが重要」「挽回しようとするのは良くない」こういった教訓はあらゆる分野に共通していて、色んな人が色んな場所で言っているけど、私が最初に目にしたのは将棋棋士森内俊之さんの言葉。「一回目のミスはそれほど大きく情勢に影響しない場合も多いのだが、動揺した精神状態で犯す二回目のミスは致命傷となりうる」

将棋であれ囲碁であれ、AI最強時代に人間プレイヤーの価値は一体どこにあるのかと活発に議論されてきた。結局人間は人間のプレイを見るのが好きなのだと、いつもふんわりとまとめられてしまう。でも、本当の価値は「過酷な競争の極地で戦った人間が得たもの」にあるのだと思う。その情報にだけ普遍性がある。AI同士がどれほど見事な棋譜を作り上げても、人間社会に通ずる普遍的なものは何も生まれない。